第5回大会演者 抄録・プロフィール: 鈴木守

鈴木 守
(上智大学文学部教授・保健体育研究室)
演題: 「身体知とケア」分科会『ケアの身体性』


要旨:

誤解を恐れずに言えば、ケアとはコミュニケーションの一形態である。ただし、互いが有するかけがえのない価値(存在の権利)を育むための相互交流である。今日のコミュニケーション世界が言語的スキルとしてのみ評価されるならば、ケアも同様にそのメディアの一方(身体)は捨象される。しかし、ケアの基盤である対象への興味・関心は、親と乳幼児の関係に顕著なように、身体を軸とした五感でとらえられる世界経験として成立する。それは、相互的営為として機能することから間身体性と呼ばれる世界に位置づく。ケアの対象者に向けられ、また鏡のように跳ね返ってくる相互の質量・熱量こそがケアの力となる。一方、ケアと異なり私の研究対象であるスポーツは非日常的営為であり、身体という連続的アナログ世界を勝敗というデジタル世界(タイム、得点等)に変換して成り立つ文化である。このシンポでは2名の哲学研究者に交じって―身体文化論とフットワークを武器に―身体知としてのケアを語り合いたい。

【プロフィール】

鈴木 守(すずき まもる)

上智大学文学部教授(保健体育研究室)。専門はスポーツ社会学、サッカーを中心とするスポーツ文化論、身体知研究など。スポーツ全般の社会学的研究を続けるかたわら大学体育の改革に取り組み、「身体知」を組み込んだ必修カリキュラムを提案し“上智モデル”として定着をみる。著書には『講座現代文化としてのスポーツⅠ、Ⅱ、Ⅲ』『「知としての身体」を考える 上智式教育イノベーション・モデル』等。