第2回大会演者 抄録・プロフィール: 合田秀行

合田 秀行
演題: 講義 「唯識思想における身体と瞑想」


要旨:
唯識思想は、瑜伽行派(ヨーガ行派)とも呼ばれるように修行を重んじる。
その経験の中から、アーラヤ識をはじめとする重層的な意識論や三性説という主要な教義が形成された。
それらが、修行者の瞑想体験に基づくことは言うまでもない。
今回は、一般的には、あまり知られていない『瑜伽師地論』という膨大なテキストの中から、
身体と瞑想に関わる言及を分かりやすい現代語訳で示し、その特徴を紐解いていきたい。
具体的には、修行者が身体に関して留意すべき項目と
呼吸法をはじめとするさまざまな瞑想法(観法)の実態を紹介することを目的とする。
この『瑜伽師地論』こそは、かの玄奘をして、インドへの旅を決意させたとも伝えられているテキストである。
漢訳系統では、弥勒(マイトレーヤ)の著作、チベット訳では無著(アサンガ)の著作と伝承が異なるが、
初期における唯識思想のあり方を知る上で重要なテキストである。

 

【プロフィール】

日本大学文理学部教授。
仏教学、比較思想、古典語等の講義を担当する。
研究分野は、インド仏教の唯識思想で、単なる文献学的方法だけでなく、
心理学などの視点から仏教における修行を多角的に考察している。
自らも瞑想を実践し、新しい仏教の探求をライフワークとする。
現在、日本印度学仏教学会理事、日本ソマティック心理学協会運営委員(事務局長)。
共著に『仏教の人間観』(北樹出版)、『仏教をいかに学ぶか』(平楽寺書店)など。