フォーラム演者 抄録・プロフィール: ジュディス・ウィーバー

ジュディス・ウィーバー
演題:「ソマティックス&ソマティック心理学:過去、現在、そして未来へ」
Title:「Somatics and Somatic Psychology: Past, Present and into the Future.」

ソマティックスの語源は、ギリシャ語で「身体」を意味する「ソーマ」である。この語源を背景にして、今日の世界においてソマティックスとは「経験される身体」あるいは「内側から経験される身体」を意味する。ソマティックスとソマティック心理学の歴史は長く、また非常に興味深い。それらが精神分析、エクササイズ、マッサージ、ある種の典型的な「ボディワーク」、エネルギー医学、あるいはその他の実践的分野へと応用されてきたなかで、今やそれらは現代の神経科学、エピジェネティックス、あるいは他の科学の領域へと結び合わされつつある。こうした科学のいくつかの分野は比較的新しいものであり、その分野の科学者たちは、ソマティックスの実践者たちがこれまで長い間にすでに積み上げてきた知識を、今まさに学び始めようとしている。つまりそれは、身体とこころは分割不可能であるという事であり、それらは互いに影響しあうがゆえに、不分のものとして扱い、また癒されなければならないという事である。

ソマティックスが精神分析へと取り入れられた結果、ソマティック心理学/ソマティック・セラピーが生まれたのだという意見もあるだろう。すなわち、精神分析の勃興期において生み出されたものが、時間を経たり、融合されたり、また他の多くの精神分析のメソッドやその他のこうしたさまざまな潮流に応用されていった結果、ソマティック心理学/セラピーが始まったという見方である。

ウィルヘルム・ライヒはこの分野におけるソマティック心理学の祖父として一般に知られている。一方、ソマティックスの祖母と考えられているエルザ・ギンドラーについては、ヨーロッパ以外ではその名はほとんど知られていない。今回の講演では、1900年初期に始まり、現在もなお多くの実践分野および統合的な癒しの分野において教え継がれ、発展し続けているソマティックスとソマティック心理学の道程を辿る。この歴史と発展の経緯を辿るなかで、それら二つの分野がどの点で交わり、あるいはどの点において区別されるのかが明確になるだろう。また講演に来られた方々には、ソマティックスの始まりを少しなりとも体験していただく機会をもつかもしれない。
 

ワークショップ:「センサリーアウェアネス:ソマティックスとソマティック心理学の基盤」
Workshop:「Sensory Awareness – The Foundation of Somatics and Somatic Psychology」

私たちは本来、感覚的な生き物としてこの世界に生まれてきます。
トラウマ、緊張、そしてある種の教育は、
私たちのこうした生きる力と、そこに宿る可能性を弱めてしまうだけでなく、
内側の静けさや安らぎを私たちから奪い、
バランスを狂わせ、不安をつくり出しています。

センサリーアウェアネスは、
感覚で感じ取られたものや生きられている経験を、深く探求してゆくプラクティスです。
ただ感覚を感じるというこのシンプルな行為を通して、
私たちは自らに本来的に備わっている豊かさへと再び立ち戻り、
自分らしく、自発的に、生命力に溢れた在り方で生きてゆく力を養ってゆける事でしょう。

このワークショップは経験にもとづくワークです。
参加者は自分が今まさに経験している事を内的に探索してゆくとともに、
世界や他者に対してどのように関わり合っているのかを探ってゆきます。
しっかりとしたサポートと安全が保障された空間でこうした探索を行うなかで、
私たちは自分自身に対する知識を深めるとともに、
自らへの信頼感と安心感を培ってゆける事でしょう。
それは、物事に対して私たちがより敏感に応答できる力と喜び、
そしてより自然なバランスへと私たちの気づきを促し、
より十分で、健やかな生き方へと私たちを導いてくれるでしょう。
自分らしさの源へと私たちが近づいてゆく程、
私たちは自分の外側の世界ともより自分らしい関わり方を結ぶ事ができ、
また自分自身の内側に安らぎと満足を見いだす事ができます。
それはまた他者、さらには世界へと広げてゆく事が可能なのです。

*ワークショップ会場は、土足厳禁ですので、靴を脱ぐか、上履きをお持ちください。

【プロフィール】ジュディス・O・ウィーバー:ライヒ派心理学により博士号取得。1965-68年を日本で過ごす。日本文化を一年間学んだ後、山田無文老師に師事し、禅の僧院にて起居しつつ老師の教えを受ける。1968年にアメリカに帰国。同年からシャーロット・セルバーのもとでセンサリーアウェアネスを学び始め、1984年にセンサリーアウェアネスのリーダーとして認定を受ける。以降、世界各国で、長期あるいは短期のクラス・ワークショップ・セミナーなどを提供し続けている。ソマティック・エクスペリエンシング、ボディダイナミック・クラニオセイクラル・セラピー、周産期および出産セラピーの資格認定を受けたソマティック・サイコセラピストであり、その他にも、ゲシュタルト・セラピスト、ローゼンメソッド・プラクティショナー、ローゼンメソッド・シニア・ティーチャーの資格を持つ 。1971年には太極拳の指導を許され、太極拳の大師範としてもその名声が知られている。1974年ナロパ・インスティチュート(現ナロパ大学)において太極拳のプログラムを創設。 また、カリフォルニア統合学研究所(CIIS)の教授として25年間、学生の指導にあたるとともに、この期間、ジョン・F・ケネディ大学においてもセンサリーアウェアネスと太極拳を指導。さらにサンタ・バーバラ大学院の共同設立者であり、同大学院でのソマティック心理学博士課程の創設者でもある。現在は、アメリカ・ワシントン州のシアトルと、カナダ・ブリティッシュコロンビアのコルテス島において、個人としての指導に重点を置きかえて活動している。国際的な指導活動にも力を注いでおり、特に日本においては毎年定期的に活動を行っている。
(翻訳・文責:齊藤由香)