第5回大会演者 抄録・プロフィール: 小木戸 利光

小木戸利光(アーティスト・俳優)・藤本靖(ボディワーカー・身体論者)

演題: 「演劇と身体論」分科会『シアターワークで体験するソマティクス


要旨:

「いま、ここにある自分を生きる」
ソマティクスの目標の一つです。
いまここにある自分とつながるには、
自らの体を感じ、自らの心を掘り下げていくことが大事です。
それには、ボディワークやサイコセラピーなどのソマティクスワークが有効かもしれません。
しかし、そのプロセスの中で得た繊細な感覚は、
いざ現実世界に出たときに、脆くも崩れてしまうことがあります。
自分一人の世界の中で成立していた平穏と安全は、
外の世界に自らを表現しようとした途端に、
新たな危機と苦難に立ち向かわざるを得ないことがあります。
そこで踵を返して自分の中に閉じこもるという戦略もあります。
しかし、シアターワークでは別の方法を提案します。
外から強要されるのではなく、
自らの内側から蕾が拓くような自己表現の道筋を示すことで、
生命の新たな息吹を奮い立たせます。
何か役を演じてくださいということではありません。
シアターワークを通じて、「いまここ」につながり、
自分にとって本当に自然な表現とは何かを一緒に探求してみませんか。
演劇の経験などは一切問いません。お気軽にご参加くださいませ!

 

【プロフィール】

小木戸 利光(こきどとしみつ)

Theatre for Peace and Conflict Resolution (TPCR) 代表。イギリス ノーザンブリア大学にて、演劇・パフォーマンスを専攻。アーティストとして、音楽、文芸、パフォーマンス作品を発表。俳優として、ドラマ、映画、舞台、ドキュメンタリー番組に出演。2017年、長崎の被曝2世の葛藤を描いたNHK「あんとき、」で主演。エッセイ集「表現と息をしている」(而立書房)を上梓する。

平和教育の普及を目的としたTPCRの事業として、平和学、紛争解決学、コミュニケーション研究、身体心理学の分野の大学教授らと協同し、「Theatre for Peace and Conflict Resolution」というボディーワークや演劇的手法を用いたワークショップ型の授業を行うほか、芸術療法としてのシアターワークを施している。日中韓の早稲田大学・北京大学・高麗大学による共同プログラム「CAMPUS Asia」では、講師として招かれ、6つの国籍からなる約30名の各国の学生たちとともに、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震とそれに伴う津波により甚大な被害を受けた岩手県上閉伊郡大槌町と釜石市を訪れて、数日間滞在しフィールドワークを行い、その経験・体験をもとに、演劇づくりに取り組んだ。

 

藤本靖(ふじもとやすし)

ボディワーカー、身体論者。東京大学経済学部卒業後、政府系国際金融機関で政府開発援助(ODA)の業務に関わる。東京モード学園ファッションスタイリスト学科修了。その後、 東京大学大学院で身体教育学を専攻し、 脳のシステムや心と体の関係について研究。米国Rolf Institute認定ロルファー™、ソマティック・エクスペリエンス認定プラクティショナー™。「神経系の自己調整力」に基づく「快適で自由な心と身体になるためのメソッド」を開発。簡単で、効果が高い疲労回復のためのワークが注目され、Google米国本社の研修プログラムでとりあげられる。心身の健康の専門家としてTV・雑誌など掲載多数。 著書に、ベストセラー「『疲れない身体』をいっきに手に入れる本」(講談社)、など。