第5回大会演者 抄録・プロフィール: 鎌田東二

鎌田東二

(上智大学グリーフケア研究所特任教授・京都大学名誉教授)

演題: 基調講演:「ケアする身体とケアされる身体~間(関)身体性と共感と隔絶の空間」


要旨:

意識がいくつもの層ないし相を持っていることは、仏教の唯識論や各種神秘主義思想などでよく知られてきたが、身体もいくつかの層あるいは相を持っているという思想がある。エーテル体とかアストラル体というのもその一つの見方である。要は、このフィジカル・ボディ(物理的・生理的身体)の他にもインヴィジブル・ボディ(不可視身体)がある、という認識である。わたしたちは、日常的に、対他的な関係において「気が流れる」ことを経験する。そして、「気が合う」とか「気が合わない」とかと言う。その「気」は一種の「間(関)身体」性である。同時に、感動を共にした際などに、そこに一時的に「感情の共同体」が生起することもある。そのような、「ケアする身体とケアされる身体~間(関)身体性と共感と隔絶の空間」を考察したい。そもそも、「ケアする身体」とはどのような身体なのか? また、「ケアされる身体」とは? そこにはたらく、関身体性とは? これまで、気とか、エーテル体とか、アストラル体とかコーザル体とか、サトルボディとかと呼ばれてきた身体性をどう捉えるか? 物理的身体と見えない身体との境界を考えてみたい。そして、そこに生まれる共感の幅と身心変容の渦を見通したい。同時に、身体の個体性と孤独性も。

【プロフィール】

鎌田東二(かまた とうじ)

1951年、徳島県生れ。國學院大學大学院文学研究科博士課程神道学専攻単位取得満期退学。岡山大学大学院医歯学総合研究科博士課程社会環境生命科学専攻単位取得退学。現在、上智大学グリーフケア研究所特任教授。京都大学名誉教授。博士(文学・筑波大学)。宗教哲学・民俗学・日本思想史専攻。著書『人体科学事始め』(読売新聞社)『身体の宇宙』(講談社学術文庫)『世阿弥』『言霊の思想』(青土社)『常世の時軸』(詩集、思潮社)他。