第5回大会演者 抄録・プロフィール: 稲葉俊郎

稲葉俊郎
(東京大学付属病院循環器内科)
演題: 「これから東西医学とケア」分科会『キュアとケア 医療における多様性と調和の課題』


要旨:

現在の医療システムでは西洋医学がメインである。伝統医療は西洋医学よりも歴史は長いが、現時点ではメインとはなっていない。その他にも代替医療や民間医療の領域もあり、広い意味での癒し、スピリチュアル、ヒーリングなどを含めると膨大な領域がある。どの分野も一長一短があるのは当然だが、キュアの領域(医療者が「治す」)とケアの領域(当事者が「治る」状況を 作る)とが混同されていることもあり、医療や医療類似行為も玉石混交であるのが現状である。今後は、安全性や情報の公開性を基礎としながら、医療コーディ―ネータという調整役の存在を設け、身心の知恵という意味での共通性を持ち寄りながら補い合う関係性を構築することが未来の医療では必要であると考えられる。ほかにも、伝統の中にある医療的な側面を発見することも重要である。例えば、能楽にはグリーフケアの側面があり、茶道には心理療法の側面がある。伝統文化の中にある医療の側面を発見しながら、未来の医療でのキュアとケアがどのような関係性を持つ必要があるのか、考察し提案する。

【プロフィール】
稲葉俊郎(いなば としろう)
1979年熊本生まれ。医師、医学博士。東 京大学医学部付属病院循環器内科助教。心臓カテーテル治療や成人先天性心疾患が専門。2010年より往診による在宅医療も行い、学生時代より山岳医療にも従事(東大医学部山岳部監督)。2011年の東日本大震災をきっかけに、医療があらゆる領域との創発を起こすために、様々な分野を横断した活動を始める。著作『いのちを呼びさますもの―ひとのこころとからだ―』(アノニマ・スタジオ)など。
HP:https://www.toshiroinaba.com/