第4回大会演者 抄録・プロフィール: 川嶋みどり

川嶋みどり
演題: 「“て・あーて”の心とわざ」


【要旨】

直立二足歩行を獲得した人類の祖先は、体重を支えていた前足を手に解放し、その手を用いて食料を得るとともに暮らしの環境を整え、
人びとの役に立つ存在としての人間の在りようの一歩を踏み出した。
他人を気遣うケアの心はこの時代から始まったといえよう。
こうして,手は人間のあらゆる営みのツールとして用いられてきた。
医療制度確立以前から母親は子供の額に手を当てて発熱の有無を確かめ、痛むお腹をさすってその緩和を図った。
専門的な医学・医療が普及してから近年まで、医師は自らの五感と手を用いて診断し治療を行い、
看護師もまた、病み苦しむその人のそばにいて、耳を澄まし語りかけ、身体に直接手を触れたケアを行って来た。
だが、昨今の医療現場では、医師・看護師とも、その手をキーボードには載せても、患者の身体には殆ど触れようとしない傾向がある。
そこで,改めてケアの視点から「手を用いて触れること」の意味と価値を述べてみようと思う。

 

【プロフィール】

(社)日本て・あーて推進協会代表理事
健和会臨床看護学研究所長
日本赤十字看護大学名誉教授

1951年:日本赤十字女子専門学校卒業
1971年まで日本赤十字社中央病院勤務
1984年:健和会臨床看護学研究所創設
2003年:日本赤十字看護大学教授、同学部長
2011年~東日本被災支援継続中
2013 日本看護歴史学会理事長 日本統合医療学会副理事長 日本国際ひゞき生命科学学会理事他
第4回若月賞(2003) 第41回フローレンスナイチンゲール記章(2007)
著書:「看護の力」岩波新書「触れる癒すあいだをつなぐ手」看護の科学社他