第3回大会演者 抄録・プロフィール: 藤井康子・石川俊男

藤井康子(ふじい やすこ)・石川俊男(いしかわ としお)
演題: 分科会シンポジウム 「「食」に関する患者の訴えの多次元性に治療者が着目したことが改善の転機となった事例」


要旨:
【事例1】うつ病に対する適切な治療後も「食欲のなさ」を訴え続けた40代のうつ病と食道機能異常の女性。
プロセスワークの手法により「食欲がない」という訴えを身体感覚チャンネルに沿って展開したところ、
「自分の欲求に従って生きることができない苦しみ」という、患者の人生全体に関わるテーマが浮上し、その後の病状改善の契機となった。
【事例2】「食べ物が食べ物に見えないことがある」と語った10代後半の軽度の神経性やせ症の女性。
この体験をプロセスワークの手法により世界チャンネルに沿って展開したところ「外界に対して距離を置き安心する」という体験が浮上した。
患者はこれがきっかけになって人間関係のストレスを自覚することができ、摂食障害の寛解につながった。
【考察】症状の原因は一つとは限らない。「食」に関する訴えを安易にこれらの患者の疾患に還元せず、患者の実感を伴った体験を尊重することの大切さを感じた事例であった。

 

【プロフィール】

藤井康子

平成13年に東京大学医学部医学科を卒業し、九州大学医学部附属病院心療内科で研修。
平成16年より国府台病院心療内科で、心身症や摂食障害などの患者さんの治療に当たる。
個人的な体験がきっかけでプロセス指向心理学に興味を持ち、その後プロセスワーク初級セラピストの資格を取得。
平成26年9月より、赤坂こころのクリニック「ケイローン」に心療内科医・カウンセラーとして勤務。

 

石川俊男

東北大学医学部を卒業後、国立精神・神経センター精神保健所心身医学研究部部長を経て、2012年より国立国際医療研究センター国府台病院心療内科特任診療部長。
日本摂食障害学会の理事長も務める。長く臨床の現場に携わり、これまでに摂食障害(神経性食欲不振症、神経性大食症)患者を2000人以上診療してきた。
「熱くならずに、諦めるな」という治療方針のもと、一人一人の患者に寄り添った治療を続けている。