第5回大会演者 抄録・プロフィール: 村川治彦

村川治彦(関西大学人間健康学部教授)・葛西賢太(上智大学グリーフケア研究所客員教授)

演題: 「ケアする者のケア」分科会『GRACEで、身体から傾聴を支える』


要旨:

GRACEは、医療・福祉・心理の現場でケアに関わりつつ傾聴する人、特に終末期のクライエントと関わる専門職の不安や悲嘆、燃え尽きburnout・共感疲労empathy distressに対処しつつ、いっぽうで慈悲compassionを保ち育てる訓練として、人類学者であり禅の老師(指導者)でもあるJoan Halifaxが考案した。GRACEとは、Gathering attention注意を集中する、Recalling intention意図を想い起こす、Attuning to self/other自分自身それから他者に調律する、Considering what will serve何が役に立つかを考える、Engage and end関わり終結させる、の頭文字である。
まずGRACEについて、村川がその理論・背景を語り、ケアと傾聴における身体性の問題を提起する。応じる葛西は、米国の臨床牧会教育Clinical Pastoral Educationの系譜にある上智大学グリーフケア研究所で傾聴者の訓練を行う立場から、GRACEが配慮する身体性を吟味し、GRACEの意義や応用可能性を問う。講義と対話によって、臨床において敏感でありながら臨床に縛られず、倫理的でありながら自由も確保するような、専門職を支える身体性のあり方を検討する。

【プロフィール】

村川治彦:関西大学人間健康学部教授。東京大学文学部卒業(宗教学宗教史学科)、California Institute of Integral Studiesでジュディス・ウィーバー博士とドン・ハンロン・ジョンソン博士にSomaticsを学ぶ。日本トランスパーソナル心理学/精神医学会元会長、日本ソマティック心理学協会副会長。日本GRACE研究会事務局長。

葛西賢太:上智大学グリーフケア研究所客員教授、宗教情報センター研究員。東京大学大学院博士課程修了、博士(文学)。上越教育大学学校教育学部教員を経て現職。アルコール依存症者のための断酒自助会などを研究。編著書として『仏教心理学キーワード事典』『断酒がつくり出す共同性』『現代瞑想論』など。