第5回大会演者 抄録・プロフィール:久保隆司

久保隆司

(日本ソマティック心理学協会会長)

演題:教育講演「ソマティック心理学とケアの可能性」


要旨:

 「ソマティック心理学」は、2011年以降、正式に日本に紹介された包括概念である。ソーマ(身体)とサイキ(魂・心理)の一体学、心身統合の学である。「ソーマ」という言葉だけで、生き生きとした身体、心身統合体としての<身>を表す。よって、ソマティック教育学、ソマティック心理療法、ソマティック・スポーツ心理学、ソマティック生態学など、汎用性は高く、関連分野は多岐にわたる。人称の文脈では、一人称(主観性)、二人称(間主観性)、三人称(客観性)、四人称(超越性)を含む「総称の手法」と言える。
 身体と心を分け、一方だけしか見ないことは根本的な誤りであるが、近代社会はその還元主義的な偏りの上に構築されたものであり、時代がその歪みの修正を求めている。その歪みが顕著に見られ、かつ私たち一人一人が、(葛藤、踠きを伴って)その超克に直面せざるを得ないのが、「ケア」を取り巻く環境・諸問題である。「ケア」は全ての人称面の尊重から、全ての人称面に対してなされなければならない。全人的と言うことである。そのためにはソマティック心理学からの視点や実践の知が、基盤として見直され、ますます重要となっていくであろう。

 

【プロフィール】

 大阪大学人間科学部(文化人類学専攻)、ジョンF.ケネディ大学大学院修士課程(ソマティック心理学・カウンセリング心理学専攻)、國學院大學大学院文学研究科博士課程(神道学・宗教学専攻)。臨床心理士、大学非常勤講師(山梨学院大学等)、ローゼンメソッド認定ボディワーカー、ビオダンサ認定ファシリテーター、BSP認定セラピスト他。著訳書:『ソマティック心理学』『インテグラル理論入門I&II』(春秋社)『ソマティック心理学への招待』(コスモスライブラリー)『PTSDとトラウマの基礎知識』(創元社)『ローゼンメソッド・ボディワーク』『ブレインスポッティング・スポーツワーク』(BABジャパン)他。