第5回大会演者 抄録・プロフィール: 早川正祐

早川 正祐
(東京大学特任准教授:死生学)
演題: 「身体知とケア」分科会『摩擦と試練を通じて身をもって知る―ケアにおける身体知の一側面』


要旨:

病いにおける苦しみが深く混沌としたものである場合、苦しむ者とそうでない者の間には、容易には架橋できない隔たりがあると思われる。まずは、その隔たりがどのような仕方で形作られ、維持されてしまっているのかについて若干考察する。そのうえで、相手の苦しみに少しでも向き合おうとする者が体験する「認識をめぐる摩擦」や「認識をめぐる試練」といった契機に注目する。これらの契機に着目することで、実存と認識とが混然一体となった動的なプロセスから、苦しみの共有――共苦――の可能性と不可能性について考察したい。

【プロフィール】

早川 正祐(はやかわ せいすけ)

東京大学大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣死生学・応用倫理講座特任准教授。研究内容は(1)行為論:共感や受容性という観点を手掛かりに、「脆さ」と「依存性」を多分にはらむものとして人間の主体性や合理性を捉え直す。(2)ケアの倫理:「認識をめぐる責任」や「認識をめぐる不正義」といった概念を導入することで、ケアの倫理の認識論的な展開を試みる。(3)臨床死生学:さらにケアの倫理を、人間の死生に関わる複雑な臨床実践に耐えうるものとして発展させる。