第2回大会演者 抄録・プロフィール: 鈴木 守

鈴木 守
演題: 朝の基調講演:「身体のリベラルアーツ―必修カリキュラム化の道程― 」


要旨:
私の職場である大学体育の「タイク的」殻を破りたい、あるいはそこから自由になりたいとの願いは、
長い間アカデミズムとしての教科体育の洗練(体育・スポーツ研究の科学化・学術化)にしかその方途は見出せなかった。
ところが、私自身ある出来事をきっかけに、より本質的な課題に突き当たることになった。それが学生の身体をめぐる問題である。
溌剌とした身体をもって学び、身体ごと他者と交流する世代にもかかわらず、
キャンパスに集う学生たちの身体は肉体にとどまり―たとえ医学的には健康であっても―知(身体知あるいは叡智)とは疎遠な存在として閉ざされ、またネグレクトされている。
この現実は、今日大学で展開されている体育科教育の中心的課題に比べ、
学生の生(生命、生活、生涯)にとってより根源的な何かを訴えているとの問題意識から、
私の“身体”をテーマにした新たな研究活動が始まり、次第に他者を巻き込んでいく。
いまこのとき、身体はいかなる学問領域でも主要なキー概念であり、これをもって学部横断的な議論を展開し、さらには全学的議論に発展していく。
こと運動する身体だけでなく、「知としての身体」や「メディアとしての身体」に学問的スタンスで迫ることは教養のコアととらえられ、
全学生が修めるべき科目であり、さらには双方向の実践的授業スタイルからみて少人数教育が望ましいとの考えが体育以外の声としても示されることになった。
新しい形と内容の必修体育「身体のリベラルアーツ」の誕生である。

 

【プロフィール】

鈴木 守(すずき まもる)
昭和27年、茨城県生まれ。
上智大学社会学科卒業、筑波大学大学院修士課程体育研究科修了。
現在上智大学教授、専門はスポーツ社会学。
10~20歳代はサッカー漬けの毎日、40~50歳代は合唱漬け、そして現在はウオーキングと登山漬けの日々である。
研究室でのデスクワークより、自然の中を歩きながらの着想に救われること多し。
<著書・論文>
『スポーツ文化の現在』編著、道和書院、2000年
『スポーツ/メディア/ジェンダー』編著、道和書院、2001年
『サッカー文化の構図~熱狂の文化装置論~』編著、道和書院、2004年 
「大学教育における「身体の知」を求めて」 ソフィア223号、 2008年3月
『知としての身体を考える』編著、学研マーケティング、2014年 
「足の文化に宿る「不合理」という名の妙味」ソフィア244号、2015年3月 など